朗読台本【ハリネズミの夢】



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〈台本について〉

・片摩 廣様 主催

#オンリーONEシナリオ2022 企画参加の1月用台本です。

投稿が遅くなり申し訳ありません。

1月14日は「愛と希望と勇気の日」なので

愛と勇気と希望をテーマに書いた台本です。

 絵本の様なアニメーションの様な

そんなイメージの朗読台本があったら面白そうだなぁと思って

はじめて朗読風の台本を書いてみました

ハリネズミの夢とはなんなのかぜひ想像しながら読んで見て下さい。


※朗読風台本なので基本は1人で読む想定で書いていますが

リレーで読んでいただいたり、複数人で読んでいただいても大丈夫です


〈作中での表記〉

「」=ルアナのセリフ

『』=ルアナ以外のセリフ

かっこ以外は語り部です

ラストはぜひ、「おわり」まで読んでください。


〈あとがき〉

この台本にこめた思いや登場人物の名前の意味を書いてます。

上演時に読むかはお任せします。

もし世界観を深めたい場合はお読みください。


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朗読台本

『ハリネズミの夢』

作…七海あお

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↓ここから台本です


「台本」

ここは森の中

たくさんの動物達が仲良く暮らしています

この森には一匹のハリネズミがいました

名前はルアナ

ルアナの身体には他の仲間と違ってたくさんの堅い針がびっしりと生えていました


彼にはずっと小さい頃から叶えたいたった1つのある夢がありました

誰かにとってはとてもささやかな

夢とは呼べない様な小さな夢です


でも、ルアナにとっては

それは簡単には叶える事が出来ない紛れもない‪”‬夢‪”‬でした

ルアナはこの夢の事を誰にも話しませんでした

だから誰も彼の夢を知りません


ルアナは星を見ながら毎晩こう言うのです


「夢は叶わないから夢なんだ。どうせ僕が僕でいる限り、この夢は絶対に叶いっこ無いんだ

大丈夫!僕は今のままで充分幸せだよ

夢は叶えるものじゃない

遠くから見ているぐらいがちょうどいい」


(ため息)


ルアナはそうやって必死に自分に言い聞かせていました

けれど自分の心がもやもやしている感覚は全く消えずに日に日に大きくなっていくばかりでした


ただ自分の想いを誤魔化している事

叶えたい夢から目を背けている事

誰でも無いルアナが、1番わかっていました


ある日の事でした

イタズラ好きなキツネのシェルムがルアナを見つけ、後ろから脅かそうと抱きついてきたのです

突然の事で驚いたルアナは思わず毛を逆立ててしまいました


「うわぁぁぁぁ!痛い!痛いよぉ!」


ルアナの針が刺さり

あまりの痛さに地面を転げ回るシェルム

あわててお医者さんを呼ぶ森の仲間たち

ルアナは何が起きたか分からなくて、その光景をただ眺めていました


やがてお医者さんが来て言いました


「治るのに少し時間はかかるかもしれないけど、君のお友達は大丈夫だからね

びっくりしたねぇ、ルアナ身体が震えている」


とっても優しい声でした


お医者さんに言われてようやく

自分の針が目の前の仲間を傷つけてしまった事

自分の身体がぶるぶると震えている事を理解しました


「僕のせいだ…僕の…僕が針を立ててしまったから…

ごめんなさい!

本当にごめん!ごめんなさい…」


ルアナは泣きながら

何度も何度も地面に頭をこすりつけて謝り続けました


ルアナがわざとやった訳では無い事は

全てを見ていた森のみんなは良く分かっていました

ただ驚いてびっくりしてしまっただけなのだと

だから仲間たちはルアナの所にやって来ては一生懸命励まそうとしました


『脅かしたシェルムだって悪いんだよ』


『そうだそうだ!お医者さんも大丈夫って言ってたじゃない。気にする事じゃないよ』


『君のせいじゃないって…ほら、元気出して』


みんなが彼を守る言葉を言います

誰もルアナを責めません

けれどもルアナはどうしても友だちを傷つけてしまった自分を許せなかったのです


「僕の針は身体中にあってトゲトゲしてるからきっとまたあんな風に、誰かを傷つけてしまう

そんなのもう、耐えられないよ!」


ルアナは友達を自分の針で傷つけてしまった事をとても後悔していました


それからも仲間たちはルアナを元気づけたくて毎日の様に彼の家に来ては励まして心配してくれました


でも

みんなが心配すればするほど

ルアナは余計に自分を責めたくなっていきました


「なんでだよ…

僕が悪いのに、僕が全部悪いのに…

シェルムはまだ病院にいて苦しんでる…

なんで誰も僕の事怒らないんだよ!

なんで誰も責めないんだよ!?」


とうとうルアナは家に鍵を掛け

誰が訪ねて来ても家の鍵を開けなくなりました


「僕は生きているだけで、そこにいるだけで誰かを傷つけてしまうんだ

もう二度と誰も傷つけたくない…」


ルアナはもう誰も傷つけないように自分で自分を閉じこめました

その間も心のトゲトゲは更に増えて

ルアナ自身にグサグサ突き刺さって行きました


「痛い!痛いっ…痛いよぉぉぉ

なんで僕、ハリネズミなんかに生まれたんだろう…僕に針さえなかったら

こんなにさびしい想いをしなくて済んだのに…

友だちにケガをさせる事も無かったのに…

なんで僕は…なんで僕にだけこんなにたくさん針があるんだよぉぉお!」


ルアナは泣きました

ただひたすらに声をあげてわんわん泣き続けました


痛くて泣きました

さびしくて泣きました

くやしくて…泣きました


それでも

みんなを傷つけたくなくてルアナは独りぼっちで

その痛みと寂しさにひたすら耐え続けました


耐え続けて行くと

ルアナの身体には色々な変化が起こってきました


食べても味がしなくなった食事

だんだん食べたいという気持ちさえなくなり毎日同じスープを命を繋ぐのに必要な最低限の量だけ胃に流しこむ様になりました


ベッドに身体を預けても全く眠くなりません

ルアナの眠気はまるでどこかに家出してしまったかの様でした


「なんで僕生きてるんだろう…

なんで…生まれてきたんだろう」


何日も何日も過ぎていきました


ルアナが家に引きこもった日から

いったいどれだけ経ったのでしょう

突然聞いた事の無い不思議な声がしたのです


『この前の嵐でこのネット破れそうだなぁでも誰も気づいてないし、言うと俺の仕事増えるし

まあ、そんなすぐには破れないだろうし

俺は知ーらないっと』


家の中に聞こえるはずの無い声でした

頭の中に直接流れ込んで来た

そんな不思議な感覚のする声でした


ルアナはなぜかその声が気になって仕方がありません


「んーっ

んんっ…

んんー!

はぁはぁ…

身体に…力が…入らないや…」


しばらく眠ることが出来ず

栄養のある食事もまともに食べていなかったのでルアナの身体は動きません


それでも

何か嫌な予感がして

ルアナは必死に身体を起こそうと頑張ります


「お願いだから僕の身体動け!

動けぇぇぇ!」


何とか起きる事が出来たルアナは

そのまま家を出て声がする方へ早足で歩いて行きました


「アンジェ!泣いたってダメな物はダメ!わがまま言わないでさっさとこっちに来なさい!」


目の前には叫んでいるお母さんリス

岩を止めているネットの下には子リスが泣いていました

ルアナ以外誰もネットが切れそうな事には気づいていません


ルアナは子リスの所に走って行きました


「ねぇ、ここは危ないから僕と一緒にお母さんの所に行こう?」


声をかけて手を伸ばしますが

子リスは泣いていて全く言う事を聞きません


するとその瞬間

ネットが切れ

支えられていた大量の岩が

ルアナ達目掛けて転がってきました


「!?」


ルアナは思わず子リスを抱きしめうずくまりました


岩は容赦なく

次から次にルアナの体へ降り注ぎました


『きゃぁぁぁー!』


岩が全て落ちきったあと

母リスの悲鳴で集まってきた森の仲間達は道具を持ち寄ってすぐに岩をどかしてくれました


たくさんの岩をどかし続けて

ようやくルアナの姿が見えました

ルアナは身体中傷だらけで意識がありませんでした

それでもその腕は子リスを守る様に必死に抱きしめていました


やがて子リスが目を覚まして

ルアナの身体の下から自力で出てきました


母リスはほっとして

子リスを抱きしめようとしました

でも子リスは母リスの所には行かず

自分の上にいたルアナが動かない事が気になりました


「ん…んー。ハリネズミの…お兄ちゃん?

眠ってるの?ねぇ!

ヤダよ!目を開けてよ!

ハリネズミのお兄ちゃん!

ハリネズミのお兄ちゃぁぁぁん!」







「ここは…どこだ?ん?白い天井…?

君は確か…」


『!?

ハリネズミのお兄ちゃん

起きた?良かった!

ここは病院だよ。お兄ちゃんいっぱいおケガしたらみんなが連れてきてくれたの。

あのね…あのね!助けてくれてありがとう!』


ようやく目を覚まし

混乱したまま起きあがったルアナがいたのは病院でした

ためらう様子もなく子リスは小さな手をめいっぱい広げて抱きしめました


「ダメだよ!僕は針でトゲトゲだから

君を傷つけてしまう!

お願い早く僕から離れて!ね?良い子だから」


子リスを何度も説得しますが嫌だと首を横にふるばかりで抱きしめたままの手を離そうとしません


困って顔をあげると

母リスと目が合いました

子リスに離れる様に説得してもらおうと口を開こうとした時

その言葉をさえぎる様に母リスは言いました


『私の大切なこの子を命懸けで守ってくれて本当に、本当にありがとうございます!

あなたは今まで私が出逢ってきた誰よりも勇敢で優しい人です!』


「いや、僕は別にその…」


泣きながら頭を下げっぱなしの母リスに戸惑っていると

子リスはルアナの顔を見上げて言いました


『ハリネズミのお兄ちゃん

さっきみたいにぎゅーしてくれないの?やっぱりケガして痛い痛いだから

私の事嫌いになっちゃった?』


今にも涙がこぼれ落ちそうなほど子リスの瞳は潤んでいました


「そんな事あるわけないだろ!

僕はこんなにトゲトゲだらけだから大切な友達を傷つけてしまったんだ。

だからもし僕がハグして君をこの針で傷つけたらって思うと…とても怖いんだ」


そんなルアナを見て母リスは言いました


『あなたはさっき、この子をかばう為に抱きしめてくれた。あんなに大きな事故だったのに、あなたが抱きしめてくれていたおかげでこの子には1つの傷も付いていませんでした。

あなたを産んでくれたご両親に心から感謝します。

あなたのハグが誰かを傷つけるなんてとんでもない!

あなたのハグは…この子の命を救ったんです』


「僕のハグが…命を救った…」


『おケガをさせてしまってごめんなさい。あの…ケガをさせてしまったのにこんな事言って良い立場じゃないと思うんですけど…

もしもご迷惑でなければ…うちの子を抱きしめてもらえませんか?

私からもどうか…お願いします!』


「えっと…」


抱きしめて欲しいなんてお願いをされたのは生まれて初めてでした

ルアナは悩みました

本当に傷付けないのか自信がありません

あれ以来誰にも触れていません

また傷つけてしまったらと思うととても怖いのです


でも…母リスにこんなにも必死にもお願いされ

子リスの今にも泣きそうな瞳を見ていたらそんな事は言っていられないと思いました


「わかった。その代わり少しでも嫌だったり痛かったらすぐに言ってね?」


ルアナは勇気をふりしぼり

恐る恐る子リスを抱きしめました

ルアナを抱きしめ返そうと子リスもめいっぱいその小さな手を伸ばしていました


『ハリネズミのお兄ちゃんのハグとってもあったかいよ。本当にありがとう』


ハグをしてお礼を言われてビックリしていると次の瞬間

ルアナは母リスに子リスごと抱きしめられていました


「えっ?あの…」


『あの時あなたが助けて下さらなかったらこの子は今ごろどうなっていたか…

こうやって抱きしめる事も出来なかったかもしれない。それを想像するだけでも恐ろしいです…

本当にありがとうございます。』


「いや…あの…えっと」


『アンジェ、本当だね。ハリネズミさんのハグはとってもあったかいね。きっとハリネズミさんの心があったかいからだね』


母リスの言葉を聞いて

ルアナの目からは涙がぽろっとこぼれ落ちました

その雫は1つまた1つと増えていってやがて小さな滝の様になりました


「僕のハグが…あったかい?」


『はい。あなたの心の様にとってもあったかいです。ねえ、みなさんもそう思いますよね』


「え?みなさん?」


するとドアの外から見守っていた森の仲間がどんどんとルアナの周りに集まってきました


「…みんな」


『お前は本当に優しすぎるんだよ…こんなに傷だらけになって』


『あなたほど勇敢で愛に溢れた人、私は知らないよ。久しぶりに顔が見れて良かった』


『ほんとにお前は…バカがつくほど優しいんだから…』


1人また1人と増え

病室は人でいっぱいになりました

突然の事に戸惑っていたルアナの目の前に

シェルムが現れました

みんなはルアナから離れ、見守る様に2人を囲いました


「シェルム…あの…本当に…」


『ごめん、ルアナ!』


ルアナが謝るより先に、シェルムはルアナに頭を下げました


「シェルム…」


『全部聞いたよ…

もう誰も自分の針で傷つけたくないって

しばらく家に閉じこもってたんだろ?』


「それは…シェルム!痛い想いさせて本当にごめん!

あの…もう、大丈夫なの?」


『ああ。もうこの通り元気だ!

あのさ…1つお願いがあるんだけど』


「なに?」


『抱きしめさせてくれない?』


「いや、だってあんなに痛い思いしたのに…!?」


ルアナの言葉を遮ってシェルムはルアナを抱きしめました


『ほら、今針に触れてても君の針は僕を傷つけない!

その針は君次第で人を傷付けずにできるんだよ!

あの時は僕がびっくりさせちゃったから…

だからもう大丈夫!

ルアナ!君の針はもう誰も傷付けないよ!

そうだろ?みんな!』


シェルムは針なんて気にしない様子で、またルアナを力強く抱きしめました

それを見ていた母リスも子リスも

そしてずっと遠慮していた森の仲間達までもがルアナを次々と抱きしめました


「そっか!生まれ持った針を無くす事は出来ない。

でも自分次第で、傷付け無い事を選ぶ事が出来るんだ!

僕、みんなを傷つけたくなくて1人でいたけど本当はずっとずっと寂しかったんだ…

またみんなと一緒にいても良いかな?」


誰もが口を揃えて泣きながら当たり前だろと言いました

そしてまた力いっぱい抱きしめました


ルアナの心にあったトゲトゲはだんだんふわふわの綿みたいになって

ルアナを刺す事は無くなりました




ルアナもちゃんとご飯が食べられる様になって元気になり家に帰ったある日の事でした

あの日以来すっかり懐いてくれている子リスが嬉しそうに言いました


『ねぇねぇ、ハリネズミのお兄ちゃん!

私ね、優しいお兄ちゃんにピッタリのお仕事思いついちゃったんだ!あのね、あのね…

ね?最高でしょ?」


ルアナは子リスの提案にとても驚きました

でも嬉しくて、自分にピッタリというその一言に勇気をもらって始めてみる事にしました

そのお仕事とは…



【癒し屋 ヘッジホッグ】

あなたのトゲトゲ抱きしめます


ルアナは森の中に

傷ついたり寂しくなったみんなを癒す為の場所を作りました


時には悩みを聞き

時には針で身体の治療をして

時には心ごとぎゅーっと

ハグをします


そこには毎日の様に癒しを求める人が集まりトゲトゲした心を癒してもらいにきます

こうしてハリネズミのルアナは

たくさんの心を癒すセラピストとして幸せに暮らしました


ルアナの針はよく効く

ルアナのハグはとてもあったかいと評判も良く

毎日予約が絶えないのだとか…


ん?

ああ、ルアナの夢が気になるって?

それは…ね

どうやらもう、叶ったみたいですよ?


「次の方ー!」


あっ!

私の番になったみたいです。それでは行ってきますね


あなたの心がもしもトゲトゲしてきたら

この癒し屋ヘッジホッグにお越しくださいね

ではまた…どこかでお会いしましょう


朗読台本、ハリネズミの夢

おわり


┄あとがき┄

※ここは配信中、読んでも読まなくても良いです。


主人公の名前のルアナはハワイ語で

『満足』『リラックス』

『みんなで楽しむ場所』という意味です


誰よりも悲しみと寂しさを知っている

ルアナのハグは

きっとあったかく優しく

これからもたくさんの心を包み込む事でしょう


そうそう、ちなみにルアナの叶えた夢は…

みなさんならきっともう…わかりましたよね?


自分が抱えてるコンプレックスは

使い方と捉え方できっと素敵な物になる

この作品にはそんな意味を込めてみました

ルアナにとっての針やハグの様な素敵な才能にあなたが気づく日がきっと訪れます。

最後まで読んでいただきありがとうございました

これを読んでいるあなたの寂しさや悲しさが少しでも癒されます様に🍀

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※シェルム:ドイツ語で「いたずらっこ、ひょうきんもの」

 →いたずら好きなので


  アンジェ:フランス語で「天使、天使のような人、かわいい人、こども」

 →ルアナの針を怖がる事なくハグする存在。ルアナのコンプレックスを活かす方法を伝える役割を持った子供だから

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